去る6月末に行われた、地元での町民運動会。
「町民運動会」と言って、ピンとこない人は都会人である。
ピンとくる人は田舎者だと認める。
私の町は、人口100人ほどでほとんどが農家だ。
子どものころは、私の通っていた季節保育所もまだあり、
地域ごとのチームも4つほどある、一家総出の大イベントだった。
今は日本の農村のほとんどがそうであるように、
子どももほとんどいない、年寄りだらけの町になった。
離農者も多く、次年度の開催が毎年危ぶまれている。
実際に、年に何度もあった町内のイベントは、
この運動会と開基祭りのカラオケ大会くらいになった。
私はこの運動会が大好きで、毎年この日だけは帰省している。
私の幼馴染たちは、当然今時の若者になって、そんな奴はまず居ないから、
周りに「よく毎年帰ってくるな、変わり者」と言われる。
だけど、ただ楽しいだけでわざわざ片道3時間かけて行くわけじゃない。
運動会は、田舎の「古き良きものと悪しきもの」が、ぎゅっと凝縮されている。
切っても切り離せないし、切り離したくない。
大げさかもしれないけど、何らかの形で残さなきゃいけない文化だとすら思っている。
そう、一種のギャグとして。
たとえば、今年のプログラム内容。
1.ゲートボールカーリング
2.蒔いて拾って
3.借り物競争
4.パン食い競争
5.天に運をまかせて
6.はやく一杯に
7.瓶釣り競争
8.長靴飛ばし
9.玉入れ
10.坊ちゃん嬢ちゃん
まだ「町民運動会」にピンときていない都会の皆さんへ、順に説明していこう。
「1.ゲートボールカーリング」
その名の通り、カーリングのような得点円に向かってゲートボールを打ち放し、得点を競う個人戦。
もちろんシルバー向け競技で、
昨年まではゲートボールリレーだったが老体を気遣い、より身体を動かさないものにシフトチェンジ。
動きがスローで地味だけど競技時間は長い。
でも年寄りとっても楽しそう。
「2.蒔いて拾って」
中国の農民運動会でもやってそうな、農業を応用した伝統競技。
男性が紅白の玉(玉入れのやつ)を交互に並べ、女性が拾う。
去年は気まぐれに男女逆バージョンだったような。
ちなみにこちらは団体戦。2班で競うが、弱小なうちの班はご期待にお応えする1敗目。
「3.借り物競争」
おなじみの個人戦。子どもでも参加できるのが売り。
私が引いたのは「自治会長」で、自治会長の足がめっさ速いため引き摺られる形で2位。
毎年の兆候だが、個人名が頻出。
去年は確か「○○さんの靴下」だった。わざわざ脱いでもらった。
「4.パン食い競争」
パンじゃねーじゃん、煎餅じゃん。と、毎年言っていたのだが、今年はなんとパン!
逆に予算が心配。
去年地元近くに嫁に行った幼馴染とガチ対決し、彼女がほしがってたチョコレートパンをゲット。
幼児に遠慮することなく全力疾走で2位になる(弟に負けた)。
幼馴染がふてくされてたから後でパンをばくりっこした。
童心に還りすぎ。
「5.運を天にまかせて
」
キャッチコピーみたいな競技名。
女性参加のかけっこで、赤・青・白のカードを途中で拾い、
「神様」(おっさん)が無作為に選んだボールと色が同じであればそのままゴールへ。
違っていたらカードをとりに戻らなければならない。
何がおもしろいんだか、この競技は何年もやってる。
これも全速力で走ったけど2位だった。農民、足腰強え。
「6.はやく一杯に」
一升瓶を水でいっぱいにするだけという思い切った競技。何年も続く団体戦。
バケツから水をすくって走って入れて・・・みたいなリレー形式だったが、
近年はよりテクニックが求められるものに進化した。
おわん、コップ、おたま、ビール缶など、
「すくえるもの」をひとりずつ持って動かずに水をリレーするというわけがわからないことに。
作戦ミスで去年はうちの弟のチームがありえない惨敗を喫した。
今年は中途半端に頑張ったが、やっぱり2敗目。
「7.瓶釣り競争」
途中で割り箸と紐を拾い、それを上手く使ってビール瓶を釣り上げる伝統の個人戦。
なんと予選もあるメインイベント。ちなみに決勝戦は一升瓶。
どうでもいいけど、瓶好きだなー。
もう何十年ビール瓶釣ってんだっていうディフェンディングチャンピオンが今年も優勝。
チャンピオン、髪は真っ白だし肌は黒いし、どんどん人間離れしていく。
「8.長靴飛ばし」
砲丸投げ的に長靴を飛ばして距離を競うだけの個人戦。
サッカーやってる弟が見事優勝。私はアラフォーに負けて女子の部2位。
どうでもいいけど、私はどこかで足を捻ったらしい。古傷が痛む。
そしてすでにビールを飲みすぎたようだ。
「9.玉入れ」
班対抗の最終種目。・・・って団体競技3つしかないのか。
ありえない差をつけられて3敗目。私たちが弱すぎるのか敵チームが強すぎるのか。
「10.坊ちゃん嬢ちゃん」
子どもたちのかけっこ。ゴールしたらお菓子の詰め合わせがもらえる。
現在、街に住む小学生以下の子どもは5人ほど・・・。しかもひとり乳児。切ない。
里帰り組を含めても子どもが足りずに、26才まで参加OKとなった。
これもここ最近毎年だけど、しっかりお菓子をもらった25才の私。
そんなこんなで、午前中に競技は終了し、後は大自然の中で大宴会。
暑くも寒くもない天気のせいか、いつもより長く宴会は続いた。
1年ぶりだと、町にも少なからず変化があった。
赤ちゃんが産まれて人口が増えていたり。
外国人妻が嫁ぎ、外国人妻の兄弟も住みつき、人口が増えていたり。
「フリフリスケスケヒラヒラの会」という奥様会が会員を徐々に増やしていたり。
結婚できない男と呼ばれていた男が、彼女を連れてきていたり。
最近は、私より少し上の世代が、旦那やお嫁さんや子どもを連れてきていたり。
けれど、特に悪い出来事はなく、みんな元気そうで本当によかった。
「来年は、どうだろうな」と、みんなが口を揃えて淋しそうに言う。
いつかはなくなるのは仕方ないとしても、
その時は町ごとなくなるような感じがして、すこし辛い。
もっと、運動会が続くように。私には何ができるだろうか。
(去年の模様)
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